S1-Ep13:手紙

今回の事件は65年も昔のこと。これまでのエピソードの中でも最も古い時代の事件です。殺された祖母・セイディの最期を知りたいと願う孫のサラが持ち込んだ母の遺品を皮切りに、ふたつの"手紙"が出てくるお話。ひとつはセイディが娘に送っていた手紙、もうひとつはセイディがジョーンジーと交わしていた秘密の手紙。

最初はまだ人種差別が横行する時代の中で、肌の色に囚われず愛を貫こうとする男女の物語かなと思いながら見ていると、最後にどんでん返しを喰らいます(;´・ω・) "フィフス・デイ"を名乗って黒人を蔑んでいたピアーズなんかに比べれば、ジョーンジーは決して悪い男ではないのですが、彼には目の前の"黙っていれば白人にしか見えない"セイディしか見えていなかったんですね。娘の写真を見るまでは、なんとか二人で生きていけると思っていたジョーンジー。結局、彼もまた当時の社会風潮に抗うまでの勇気はなかったということでしょうか。最期に自分の手で彼女の苦痛を終わらせたのは、彼なりの最後の優しさだった?

"フィフス・デイ"の源流になっていそうなクー・クラックス・クラン(KKK)と言われる白人至上主義団体も大きくその影響力を落としつつあった頃で、ピアーズたちのような存在は町の中でも少数派だったのではないかと思われます。また、事件のあった一か月後の1939年9月1日にドイツのポーランド侵攻によって実質的に第二次世界大戦が勃発しますが、ある意味、その戦争のおかげで黒人たちの社会地位が向上し、戦後の公民権運動へと繋がっていったという分析もあったりするんですね。とはいえ現代においても人種差別は完全に無くなっているわけではないですが・・・。

劇中でセイディを演じるメタ・ゴールディングは確かに美人さん。『CSI科学捜査班』ではウォリックの嫁役を演じていました。ハイチで生まれ、アメリカ、インド、フランス、イタリアで暮らした経験もあり、女優になる前、イタリアではナショナルフィギュアスケート選手だったんだとか。最近では『エンパイア』にも出演しています。

原題「The Letter」〔初回放送日:2004年1月25日〕


1939 in Music

物語のテーマにあわせてか、今回は全て黒人のミュージシャンによるラインナップ。当時、黒人の世界からブレイクしたジャズを中心にセレクトされているようです。

オープニングナンバー「Dream Lucky Blues」という曲。1902年にカンサスシティで生まれたジュリア・リーによるもので、彼女は"ダーティブルース"と言われるジャンルで知られるミュージシャンのようです。ダーティーブルースというのは"セックスやドラッグなど、社会的にタブーとされるようなテーマを取り上げたブルース"だそうで、第二次世界大戦前に人気を博したジャンルだそうです。実際ラジオでは流せない内容のものも多く、ジュークボックスで聴くことがポピュラーだったようですが、彼女の曲はラジオ界隈でヒットしたそうなので、そこまでゲスな内容ではないらしい。

らしい、というのは彼女の作品に関する情報がWeb上で非常に少なく、今回のオープニングにチョイスされた「Dream Lucky Blues」についても、デビュー曲だという情報もありましたが、どうなんでしょ? 曲そのものは1946年にリリースされた『Julia Lee With the Tommy Douglas' Orchestra』というアルバムに収録されているようです。歌詞のデータも見つけられずで、なんとも謎のままでございます。

2曲目は大御所のコラボでございます。曲そのものは、1934年にフランク・パーキンス作曲、ミッチェル・パリッシュ作詞で誕生したジャズのスタンダードナンバー「Star Fell On Alabama(アラバマに星落ちて)」で、以降、シナトラやビリー・ホリディなど数多くのアーティストに歌い継がれているアラバマ州のご当地ソングのような一曲(一時期はアラバマの車のナンバープレートのキャッチフレーズにもなったくらい)。1833年11月に実際にあった、しし座流星群の様子にインスパイアされたというだけあって、非常にロマンティックなメロディ。今回、番組が選んだルイ・アームストロングとエラ・フィッツジェラルドバージョンは、1956年10月にリリースされた二人の初めてのコラボアルバム『Ella and Louis』に収録されています。

続いて、エンディングのナンバーもエラ・フィッツジェラルドの「Blue Moon」。昔の罪を吐露するジョーンジーの姿にオーバーラップして流れるこの曲、元々はかのクラーク・ゲーブル主演の映画『男の世界』のために用意したものだそうで、エルヴィス・プレスリーやディーン・マーティンなど大物シンガーたちに好まれ歌い継がれている名曲。1981年の公開されたアメリカ映画『狼男アメリカン』ではさまざまなバージョンで効果的に挿入されています。特に有名なのは1961年のザ・マーセルズ版とのことで、この時ビルボードポップチャートで3週連続1位、R&Bチャートでも1位を獲得。イギリスにおいてもシングルチャートで1位を獲るなどして、100万枚を売り上げてゴールドディスクに選ばれているようです。が、肝心なこのエラのバージョンの詳細については調べきれませんでした・・・知っている方は情報プリーズ!(;´・ω・) ちなみに作品自体が作られたのは1934年。

Blue Moon You saw me standing alone 
Without a dream in my heart Without a love of my own 
Blue Moon You know just what I was there for 
You heard me saying a prayer for Someone I really could care for 

という歌詞にある「愛する人の愛も得られず ひとりぼっちの私を貴方は見ていた/どうして私がそうしていたのかあなたは知っている/私が心の底から大事に思う人のために祈るのを、あなたは聴いていた」という部分は、最後の夜のセイディの心情を写し取っているように思えます。


1939 in JAPAN(昭和14年) 

さて、今回の事件が起こったのは1939年。上にも書いたように、9月にはナチスドイツがポーランドを電撃侵攻し、第二次世界大戦が幕を開けた年。世界中に不穏な時が流れ始め、2年後の1941年12月8日、中国を相手に戦争をしていた日本は、真珠湾に攻撃を仕掛け、遂にアメリカも敵に回す世界戦争へと突入。1945年8月15日に玉音放送が流れるまでの間、太平洋戦争という名の不幸な歴史を日本は刻むわけですが、世界の視点で眺めると、この年こそ不幸な時代の1ページ目と言えるのかもしれません。

戦時統制が進む日本では、国内の物価・賃金の凍結がはじまった影響で闇マーケットが誕生したり、国家総動員法による国民徴用令が公布・施行され「白紙」による徴用がスタートしたり、国民が戦争の煽りを受けて苦しい生活を強いられていたわけですが、そんな時代にも関わらず、人気を博していたのが大相撲。レジェンド力士、双葉山が驚異の69連勝を果たしたのもこの年だそうです。なにしろ当時の相撲は春夏の年2回。それを考えるとこの記録は凄いんじゃないでしょうか。国民が日中戦争での日本軍の快進撃を重ね合わせて大フィーバーするほどで、彼の活躍の影響でそれまで11日制だったのが13日勢、ついには15日制になったんだそうです。

TVなんてシロモノはまだ普及しておらず、なんならNHKが翌年開催予定だったオリンピック東京大会に向けて、実験を始めたのがこの年。結局、戦争のせいでオリンピックは夢と消え、昭和16年にはTV開発に携わっていた研究者たちも、軍事研究に駆り出されてしまい、日本のTV誕生は先送りとなってしまうのでした・・・。

ネットで調べると"当時の人気商品"なんて情報もあり、見てみると<防毒マスク><千人針セット><各種代用品>なんてのがラインナップされてます(;'∀') 代用品というのは、例えば陶製の湯たんぼやストーブ、挙句の果てには鏡餅まで陶製だったらしい!(;'∀') 逆に郵便ポストはコンクリート製が流行っていたとかいないとか。(というか陶器製の鏡餅って今もあるんだな!)

音楽となると、これがもうさっぱり知らない曲ばかり(当たり前か)。ヒットソングを見てみると、「上海の花売娘」「夢の北京」「チャイナ・タンゴ」「広東ブルース」「何日君再來」などの中国を舞台にした曲に、「兵隊甚句」「愛馬進軍歌」「太平洋行進曲」「機関兵の手記」「戦友の唄」「暁の決死隊」「従軍記者日記」「戦線お国自慢」「戦線夜更けて」などの戦場ものが目に付きますね。中でも米山博夫さんの「戦線お国自慢」(作詞:辰田国男/作曲:山田栄一)てのが気になって調べてみるんだけど音源は見つからず、歌詞だけ発見。

君が踊れば俺もやる 夜襲の時ももうじきだ 
皆揃って伊奈節を 唄いながらにササ出発だ 
ハア遥か向こうに銃声上がる 
あれは敵陣敵の寝惚け 敵の寝惚け 盲撃ち

いやー、なんか歌詞だけ見るとなんだか楽しそう・・・(;´・ω・)

この頃の日本の"ブルース"ってのはこういう感じ?? ちょっとあちらとはテイスト違いますな。

個人的には、かのゼロ戦が誕生した年(正確には一二試艦上戦闘機)だとか、ニッポン号(96式陸上攻撃機を改造したもの)が世界一周を成し遂げたことをトピックスにあげておきたし。

今日はこのへんで締めとします。

本日のリリーはちょっと引きアングルで。スコッティにカイトとのことをそれとなく聞かれて、肩をひょいとすくめながら「私、ちょっと失敗しちゃったかも」と笑うリリーがキュート。さっさとケリつけてしまいなさい、あんないけ好かない男!

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