999-Ep4:大盗賊アンタレス

松本零士・不朽の名作『銀河鉄道999』をレビューしながら、鉄郎やメーテルとともに「命の燃やし方」について考えていく企画でございます。今回は第4話『大盗賊アンタレス』。年老いた孤独な盗賊に、鉄郎は何を見て、メーテルは何を見たのか。歳を食ってしまった独り身の僕には、身につまされるエピソードでございました。


■身ひとつで銀河鉄道に忍び込む老盗賊

アンタレスが幾つなのかは劇中からは分かりませんが、白髪・白髭、物腰を見るにつけ50代いや60代にはなるのじゃなかろうか? まかりまちがっても30代とかではなかろう。そして彼は生身の人間である。タイタンの駅から車両の下に潜り込んでいたらしいけど、999の周囲がある種のエアチューブのようになっているとしても、気圧や温度とかは人間にとって過酷なはず。スピードも結構なものだろうし・・・老いぼれとは思えない恐るべき体力だ。見習いたい。


■子どもつくり過ぎ!

結局のところ、鉄郎たちを人質にして向かいたかったのは自分の家になっている小惑星。そもそもどうやってタイタンまで移動したんだ?という疑問は湧きますが、それを吹き飛ばす勢いの子どもたちの数。17人いますが、もっと居そうです。あまり年が離れているようにも見えないので、年子とか双子とかだとしても、なかなかハイペースな子作り・・・。亡くなった奥様も凄いです。

こんだけ子どもたちを養うためには、それは真っ当な商売では難しいでしょうな・・・。1年くらい留守にしてたらしいですし。なんか凄い人生です。


■漢の強さ、男の弱さ

鉄郎から取り上げた戦士の銃を手入れしながらアンタレスが鉄郎に言います。「いいか坊主!撃たれる前に撃て!相手が涙を流しても、必要なときは心を鬼にして容赦なく撃てぃ! 宇宙で生き残るにゃそれが絶対の条件なんだ」。その歳まで生身の体で生き延びてきたアンタレスの言葉は、鉄郎の心にしっかり刺さったことでしょう。機械の体になってしまえば、死の恐れから解放されるわけで、このセリフは生身の人間だからこそ言えるし、生身の人間だからこそ響く言葉ですね。それでも今の鉄郎は機械の体になる夢をあきらめません。「俺にガキの頃に似て頑固だ」と笑うアンタレス。

その一方で、帰り際のメーテルを引き留めて「お嬢さん、・・・ここへ残ってくれないか?」と言いにくそうに懇願してみせたアンタレス。強い漢の中に隠されている、弱い男の本音。「俺の支えになってくれ、頼む!」そんなセリフ、若い頃の彼なら言わなかったのでしょうが、妻を失った今、大勢の子どもたちの姿を見るにつけ、伴侶の必要性を感じていたのでしょう。結局、メーテルには断られてしまいましたが、アンタレスは吹っ切れたように豪快に笑いながら二人を見送りしました。

なんだかね、バツイチの僕的には堪えるなあ(笑) 子どもこそいないけれど、ひとつづつ確実に歳を重ねていって、自分への根拠のない自信も薄らいでいき、心を開いて弱音のひとつでも吐ける相手がそばにいればなぁ・・・と思うこともチラホラ。ラオウのように死の瞬間まで強く居続けることなんて無理なわけでね(;´∀`) メーテルのような美女とは言いませんが、テヨンのような女子はどこかに居ませんかね。

銀河鉄道の路線を変えたアンタレスに追っ手が来ないよう、999の記録に彼の家の所在が残らないようにしたメーテル、そういうところが彼女らしい。劇場版では「メーテルには気を許すな!」と鉄郎に言い残して散るアンタレスですが、TV版ではそこまで深い物語はなく、あっさりと終わりますね。

そういえば、アンタレスが戦士の銃を手入れしながら「30年くらい使ってない」と言っていましたが、とするとトチローが死んでから(銃を使わなくなってから)それだけ時間が過ぎているということになりますね。


■エンディングナレーション

宇宙をひとり旅する者は死ぬために旅するようなものだと言う。
この無限に広がる宇宙に輝いている星は
死んでいった孤独な勇者たちの涙の凍りついたものだと言う。
もし、そうだとしたら涙の数のなんと多いことか。

最後の一行がたまらなくシビれます。人知れず涙を流すアンタレスの背中が見えるようです。


■次回予告ナレーション 

第5話「迷いの星の影(シャドウ)」

太陽系の最果てに冷たく光る氷の星。
機械の体に替える時、思い迷った人の星。
人は"迷いの星"と呼ぶ。
次回の『銀河鉄道999』は「迷いの星の影(シャドウ)」に、停まります。

いよいよ太陽系の外へ飛び出していく999。冥王星のエピソードはなんとなく覚えていますが、楽しみです。


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