999-Ep3:タイタンの眠れる戦士

松本零士・不朽の名作『銀河鉄道999』をレビューしながら、鉄郎やメーテルとともに「命の燃やし方」について考えていく企画でございます。今回は第3話『タイタンの眠れる戦士』。僕も今回初めて知りましたが、土星の衛星タイタンで、鉄郎にとって、いや松本零士バースにとってもかけがえのない出会いが生まれたエピソードです。


■何をするのも自由な星タイタン

2人が降り立ったタイタンは、地球時間16日が1日に相当する星(正確には15日と22時間)。ヨーロッパ調の町並みは美しく、人々は幸せそうな笑顔で語らっています。しかし、その一方で駅前で何者かに撃たれて倒れる人がいても、誰も助けないばかりか、気にも留めようとしません。この星には"楽園法"という法律が施行かされているからです。

メーテルをさらった"葡萄谷の兵士"に麻酔銃で眠らされてしまった鉄郎を保護した老婆曰く、「このタイタンでは何をしてもいいんだ。自由にやっていいんだよ。坊やが私を殺したければ殺してもいいんだ。警察だって捕まえに来やしない。その代わり、個人の自由を妨げると罪になるのさ。」とのこと。まったくもって恐ろしい世界です(;´Д`A ```

その昔、尾崎豊が「自由っていったいなんだ? どうすりゃ自由になるかい? 俺は思うように生きているかい?」と歌ってましたけども、本当の自由ってどういうものなのか、を僕たちに突き付けてきますね。フランス人権宣言の第4条にあるように真の自由とは"他人を害することのないもの全てをなし得ること"であり、何をするのも自分の思うままということは決して"自由"なのではない、ということに僕はいつ思い至ったのだっけ。

その昔、中国では"好き勝手"、"自由気まま"といった意味で使われていた"自由"という言葉を、今のような意味合いに位置付けたのは福沢諭吉大先生なんだそうです。凄い。


■謎の老婆の正体

鉄郎を介抱し、勇敢な戦士だった息子の形見だという"戦士の銃"と、弾痕だらけの帽子を手渡してくれた老婆。劇中では彼女の名前は明かされませんが、実はあの大山トチローの母という設定らしいですね。まったく忘れてしまっているんですが、劇場版第1作でもこのシーンがあったようで・・・また観ないといけないなあ・・・(笑) ちなみに老婆の話からすると、トチローはタイタンに戻ってきて死んだということになっているようです。この辺は他の作品と設定が違っておりますな。


■印象深いクレアの物語

原作1巻の第3話、4話がひとつにまとめられている今回のエピソード。前半は全身をクリスタルガラス化した機械化人のクレアが登場。999では人気のキャラの一人ですね。彼女は、自分の意志ではなく母親の見栄でその体にされてしまった機械化人。血の通った生身の体を取り戻すために、999でアルバイト(!)をしてお金を稼いでいる彼女はある意味、母親の"自由"の犠牲になった存在と言えます。

空間トンネルの中で、悪魔に狙われた鉄郎を守るため(というよりは生身の体を持った鉄郎を尊いと思ったのでしょう)クレアはその命を賭して砕け散ってしまい、その亡骸は車掌さんによって宇宙に放たれてしまいます。ただ一つ手元に残った涙の形の破片を握りしめ、鉄郎は999に乗ってから初めての涙を見せるのでした。彼女のキャラクター、本当に印象的で後に短編劇場映画『銀河鉄道999 ガラスのクレア』になったのも頷けます。


■999のオーバーテクノロジー

松本零士と言えばメーター。メーターと言えば999機関室。そんなイメージです。機関室が見たいという鉄郎を連れてきたメーテルによれば、999の頭脳は「自分で判断し、しかも絶対にミスをおかさない」ように出来ていて、「遠い外惑星で滅び去った科学惑星の遺跡や、異星人から手に入れた資料も参考にしてつくり上げられた」のものだそうです。故に「この機関車のメカニズムは、人類の理解できないものもある」とのこと。理解できないのに、よく作ったなーと(笑)

最後に今回のサービスカット。全滅した"葡萄谷の兵士"たちの傍らで気絶していたメーテル。

なぜ下着姿になってしまったのかは謎。


■エンディングナレーション

それから360時間後、999はタイタンをあとにした。
昔、美しい心の人が勇気をもって切り開いた星タイタン。
しかし今、ここには自由のなんたるかを考えない人が多すぎる。
つまり、人の心は荒れ果てているのだ。


■次回予告ナレーション

第4話「大盗賊アンタレス」

寂しい宇宙の闇の中で暗い過去を背負って生きる男。厳しい宇宙の風だから情けを捨てて生きろと教える男。彼は宇宙の大盗賊。次回の『銀河鉄道999』は「大盗賊アンタレス」に、停まります。


0コメント

  • 1000 / 1000