予選の後、F2のアクシデントによって命を散らした"TONIO"ことアントワーヌ・ユベールは、ガスリーやルクレールたちと共に、モータースポーツの頂点を目指す友人だったんですね。とりわけガスリーに至っては14年に渡る交友があり、同じ部屋を分かちあうルームメイトだった時代もあったようで、その悲しみは想像を絶する。
「今でも何が起こったのか本当に信じられないよ。22歳は若すぎる。僕たち全員、君に誇りに思ってもらえるように頑張っていくからね。僕らが小さい頃から抱いていた夢を追い続けるよ」
そんなメッセージをTwitterで亡き友に送ったガスリー。
そんな彼から「絶対に勝て」と託されたのが、ルクレールだった。F1の舞台で、初めてポディウムの真ん中に立ちながら、何とも言えない表情を見せていた彼の心中を察するのは簡単なようで難しい。ビアンキとの約束を果たした輝かしい瞬間に、再び友を偲ぶことになるなんて、いったいどんな気持ちなのだろうか・・・。見ている側も、忘れられないレースになった。
■アルボン5位! ホンダ勢見せ付ける
こうなってしまうと、あまり多くを語る気も削がれてしまうのだけど、いくつか、これからに繋がる話題だけは書き留めておこう。
まずはレッドブルデビューになったアルボン。グリッドペナルティで17番手からのスタートだったにも関わらず、ファイナルラップまで手堅く攻め続け、なんと5位入賞です! しかもホンダは金曜時点で投入した最新のスペック4ではなく、スペック2に乗せ換えていたのだとか(◎_◎;) とすると、もっと上まで昇りつめてた可能性だってある。見事なまでの1軍デビューを果たしたアルボン、それでも彼は言う。「僕はまだこのマシンをうまく走らせるための小さな秘訣を見つけられていないから、これからそれを探って適応したい」確かにそれはありますよね。
一方、トロロッソ勢もクビアトがスペック4のエンジンで19番手から7番手のポジションへ。ガスリーも同様に新しいマシンのフィーリングに悩まされながら、クビアトの2つ後までポジションを上げて見せました。
結果、ホンダは早々に消えてしまったフェルスタッペンを除く3人がポイントゲット。次戦モンツァに向けて、期待が高まる結果ではないでしょうか?
前回の記事で憶測でスターティンググリッドを書いてみましたが、全然違っていたので、改めて予選結果から決勝グリッド、最終リザルトを一覧にしてみましたよ。ジョビナッツィのペナルティを反映してみても、なぜ10番手がノリスでなくてリカルドなのか、さっぱり理解できてません(笑) 誰か説明して!
▲色の付いているのは、ポジションアップが著しいドライバー。
お馴染み『RACE FANS』のラップチャートを見ても、特にトロロッソの2人、タイヤ交換してからのポジションアップっぷりがヤバいです。ヴェッテルと対照的ですね。もうあと1,2周あったらアルボンは4位になれていたかも。
■今週のピットウォーク
ユベールとともにF2を戦うドライバーたちが、レース2の中止もあって数多く姿を見せていたようです。残念ながらほとんど顔と名前は一致しませんでしたが、ミック・シューマッハ(左上)、ジュリアーノ・アレジ(右上)の姿が。特にアレジの息子ジュリアーノは、故意ではないにしろ今回の事故のきっかけを作ったともいえるので、本人は相当応えていると思います。久しぶりにじっくり素顔を見ましたが、ホントにアレジに似てる。でもってどことなくゴクミテイストもあって・・・いい男になってますね。
左下はそんな彼らの3世代か4世代くらい前になるであろうジャッキー・イクス。"ル・マン キング"の異名を持ち、ル・マン24時間レースで6度も優勝したレジェンドドライバーですが、今回は地元ベルギーの開催でお出掛けでしょうか。こっちもしばらく見ないうちにすっかり爺ちゃんに・・・。同じジャッキーのスチュワート爺さんより6歳若いはずなのに、こっちのほうが老けてるんじゃない? まあ、スチュワート爺さんが元気過ぎるだけか。
右下はユベールのお母さまとご兄弟。追悼セレモニーで気丈にふるまっておられ、それがまた逆に胸を打ちました。
■次戦もフェラーリにチャンス?
さあ、今回は早々に締めてしまいましょう。次戦、イタリアGPのお話。今回も中低速コーナーではメルセデスに詰め寄られ気味でしたが、やはり高速区間、ストレートでは速さを見せたフェラーリ。タイヤチョイスのミスとエンジンさえ壊れなければ、モンツァでも十分にメルセデスの前に出れそうです。
コースの形状を見ても一目瞭然。90周年を祝うティフォシで溢れかえるであろうモンツァ。個人的にはそろそろヴェッテルにスポットを浴びて欲しい気がしますなあ。
そしてフェルスタッペンは、ペナルティ覚悟のスペック4投入だそうです。準地元のベルギーでいいところを見せきれなかった分、ドカンと一発見せて欲しいもんですが、今回のアルボンを見ていると、フェルスタッペンもうかうかしてられない感じ。
悲しい事故はレースにはつきもの。昔に比べて遥かに安全にはなったとはいえ、今回のように不確定要素が不幸にも重なることは、これからもあるでしょう。それでも先の見えないオールージュをアクセル全開で駆け上がることが、ドライバーたちの生き様だったりするのです。僕にはもう想像もできない次元ですが・・・。きっと誰もが、この悲しみを乗り越え、ユベールの夢を代わりに背負うために、これかれあも躊躇なくペダルを強く踏み込むに違いありません。
▲今回は全てのドライバーがこの19番のステッカーをどこかに貼っていました。レース19ラップ目には観客総立ちでのスタンディングオベーション?追悼の拍手も。
▲パルクフェルメで何よりも真っ先に「これを映せ!」とばかりに指さしたルクレール。胸が熱くなりました。
短くも熱い22年を生きたユベールに、改めて合掌。
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