松本零士・不朽の名作『銀河鉄道999』をレビューしながら、鉄郎やメーテルとともに「命の燃やし方」について考えていく企画でございます。松本先生、無事に意識も戻り「なんでここにいるの?」的なこともおっしゃられているようですが、無事で良かった。無茶は禁物、お体を大事にしていただきたいものです。さて、今回の第6話『彗星図書館』は太陽系最後の停車駅での物語。どこか不思議な雰囲気を漂わせながら、999のストーリーに横たわる様々な問いかけを、見る者に投げかけてくれます。
■彗星の生まれるところ
コメットステーションという名の星。あらゆる彗星が生まれ出るところだとメーテルは教えてくれます。上下左右の概念も、熱くも寒くもない世界。ふわふわと丸い星のような住居や店舗が、漂うように存在しております。わずか1時間30分の停車時間ですが、その短い時間の中でいくつものドラマがギュッと詰め込まれておりました。まずは、第1話での鉄郎と母親を思わせるような出で立ちの母子。名前も無く、エンディングでもただ"母親"と"子供"とだけ表示される2人です。
鉄郎と同じように機械の体を欲しがる息子のため、メーテルと鉄郎が下車している間に、2人の姿に変装して999に乗り込むのですが、車掌さんにすぐに見破られ(パスも持っていなかった)、無情にも車外へと放り出されてしまいます。「偽物は処理しました。ご安心ください」と事務的に伝える車掌さん。いたたまれなくなった鉄郎は「あの人たちだって・・・」とメーテルを見つめますが、彼女は静かに首を振るばかり。
自分と母親に酷似する親子と鉄郎。車窓を挟んだこちらとあちらで違うのは、パスを持つ者と持たざる者の違い。鉄郎が999にこうして乗ることが出来たのはなぜなのか? メーテルはなぜ鉄郎を旅に誘ったのか? 第1話から引き摺っている、いろいろな疑問が改めて湧き出てくるシーンです。
放り出した母子を見つめる車掌さんに、ちょっと怖いものを感じます。
■機械化手術詐欺
鉄郎たちは999に戻る前、時間潰しに書店を訪れていました。メーテルには「鉄郎らしくない」と言われたものの、1970年代の少年ジャンプを見つけたりしてご満悦の鉄郎(笑)
『STAR WARS』の第1作目、エピソード4が日本で公開されたのは1978年6月24日。意外としっかり描いてあるんですな。版権とか大丈夫なのか?w ちなみにこのシーンの少し前には
「あ!松本零士の戦場シリーズだって!」
「コクピットシリーズと言って、評判の漫画だったようね」
などという楽屋オチ的なメーテルと鉄郎の会話もあったりします(笑) なにしろ"地球で売ってたあらゆる本が集められている"(メーテル談)だそうなので、希少な戦場まんがシリーズもあって当たり前なんですな♪ というか「彗星図書館」なのか「書店」なのか、どっちなんだ。雰囲気的には図書館っぽいけどさ。
まあ、ともかく、ここで鉄郎は怪しげな男に難癖をつけられ、銃で撃たれて傷を負ってしまいます。(この男も"美男子"としか紹介されず)。
・・・んーと・・・美男子かな・・・声は古川登志夫だけど。五右衛門の声でしゃべる次元みたいな感じ?
メーテルに言われて病院に向かう鉄郎ですが、この時のメーテルの心配っぷりに鉄郎が「なんだか母さんみたいだ」とこぼすシーンがあります。この言葉に対してはメーテルは特にリアクションはしないんだけど、確かに今回は冒頭から、どことなく母親感を醸し出していたメーテル。鉄郎のそのセリフは観ている側に、メーテルは何者なのか? なぜ鉄郎をそこまで守ろうとするのか? といった初歩的なクエスチョンを投げかけてくるのですよ。
病院に行くと医者は「これは手足を機械にしなきゃならん!」と有無を言わさず手術を迫り、鉄郎を困惑させます。鉄郎が何を言ってもガンとして聞かず、強制的に手術しようとする医者。なにしろ「お金が無いんだ!」と言っても「この病院で10年働けばいい」と取り付く島もない。仮面ライダーのごとく拘束されて強制手術されそうな鉄郎でしたが、幸いにも先ほどの美男子と医者がグルだと悟ったメーテルによって救われます。
病院に来てすぐの時には「早く機械の体になりたい。そうすりゃこんなケガなんかなんともないのに」と言っていた鉄郎が、いざ医者に機械の体への交換を薦められると「これくらいのケガで大袈裟な!」と拒む姿はなんともいえない珍妙さがあります。ただ、そのチグハグな思考回路が鉄郎らしさなのかもしれませんが・・・。そして、鉄郎があくまでも"タダで機械の体をもらう"ことにこだわっているのは、死に別れた母親との約束だから、というのもあるのでしょう。
高いか安いかよく分からない機械のパーツカタログです(笑) 表示が"$"ってことは、アメリカドルってことでしょうか? こんな未来になってもアメリカドルは世界通貨、いや宇宙通貨なのねん。
■アンタレスの言葉
辛くも病院から逃げ出した鉄郎たちを、あの"美男子"が背後から仕留めようと忍び寄りますが、気配に気付いた鉄郎によって返り討ちにあってしまいます。メーテルも驚くほどの早撃ちっぷりに、鉄郎は大盗賊アンタレスに教わったのだと言います。
いいか坊主! 撃たれる前に撃て!
相手が涙を流しても、必要なときは心を鬼にして容赦なく撃てぃ!
宇宙で生き残るにゃそれが絶対の条件なんだ
アンタレスのその言葉通り"撃たれる前に撃っただけだよ"と鉄郎。たくましさも少しUP。
しかし、その後、冒頭に紹介した母子の姿を泣きながら見送った鉄郎は、
相手が涙を流しても、必要なときは・・・
と再びアンタレスの言葉を口にするのです。たくましくはなっても非情にはなれないんですよね。でも、それが鉄郎の強さだったりするんですね。まっすぐな強さ。3重連になってコメット・ステーションを離れていく999の中で、メーテルは鉄郎に言います。
鉄郎・・・。999はいよいよ太陽系を離れるわ。
そうなるとね、宇宙法の効き目があるのは、レールの上と駅の構内だけ。
あとは無法の世界になる。わかったわね? 鉄郎。
それは「もっと強くなれ」と願う母のような気持ちから出た言葉なのでしょうか。
■エンディングナレーション
彗星の巣、コメット・ステーションまでの道のりは太陽系の庭の中のようなものだ。
機械の体を求めて母なる太陽系を離れていく鉄郎の前には、
いったいどんな事件が待ち構えているのだろうか? それは鉄郎にも分からない。
■次回予告ナレーション
第7話「重力の底の墓場(前編)」
罠にかかった獲物は死に物狂いで脱出を考える。
宇宙の闇に暗く淀んだ重力の墓場。
それは孤独な女が仕掛けた悲しい人生の罠だ。
次回の『銀河鉄道999』は「重力の底の墓場(前編)」に、停まります。
次回は劇場版や舞台などでも登場する人気キャラ、"時間を操る魔女"リューズが登場するお話。
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