海外ドラマ『COLD CASE』各話のレビューと、このドラマ最大の特徴である挿入歌について紹介していきます。舞台となった時代にアメリカでどんな音楽が流行っていたのか、僕も勉強していきたいと思います。また、同時に当時の日本の様子(世相や文化)も合わせて見てみます。
リリー宛にかかってきた男からの電話をきっかけに、1989年に起きた出来事と向き合うことになった捜査班。電話の主の名はジェームス。彼によればクリスタル・ホーガンという名の老女が殺されたのだという。記録をたどり、リリーたちは家の地下でそれと思しき死体を発見。それがジェームズの祖母だと判明し、リリーは彼とコンタクトを取るべく心を開いていくのだが・・・。
原題は「Sherry Darlin'」。スプリングスティーンの歌にも同じタイトルがありますな。このシェリーがクセモノで、当時10代だったジェームスをそそのかして、祖母を殺め、年金を詐取した黒幕。今はジェームズを捨て、いけしゃーしゃーと金持ちの医者をたぶらかして妻の座についたシェリーですが、なぜかジェームスは別れて3年も経つのに彼女をかばおうとします。いまも自分を愛してくれている女だという幻想(期待?)を抱えたまま、一人生き続けてきたジェームスの姿は、なんともやりきれない。男は未練がましくて女は切り替えが早いなんて話をよく耳にしますが、確かに自分も含めて周りにそういう男は多いなあ・・・(笑) どうして?w
最後はリリーの涙目の説得によって自殺を思いとどまり、仲違いしていた兄と祖母を埋葬することが出来たジェームスですが、純粋過ぎるが故の、あまりにも辛い人生。
映像で印象的だったのは過去のフラッシュバックシーンで、青や赤、黄色といったワンポイントカラーを強調したモノクロ場面。これも何か時代的な意図があるのかな。ちょっとわかんないけど。
出演俳優さんでは、『グリム』のモンローこと、サイラス・ウィアー・ミッチェルが出演しております。最初、電話で話す口元しか見えないんですが、それだけで彼だと分かるくらい特徴的なルックスをしてますよね。劇中でブサイク扱いされておりますが、確かにサイラスだからこそ、物語が引き立っていたように思いますね。ナイスキャスティング。
原題「Sherry Darlin'」〔初回放送日:2003年12月7日〕
1989 in MUSIC
オープニングのナンバーは、ザ・キュアの『Lovesong』。イギリスのロックバンドだそうです。彼らの8枚目のアルバム『Disintegration』からシングルカットされた中の一曲。ビルボード・ホット100での最高位は2位で、ジャネット・ジャクソンを越えられなかった模様。
どんなに遠く離れていても お前のことは忘れない
どんなに長く離れていても いつもお前のことを想ってる
口ではなんと言おうとも お前をこれからも大切にするし それはずっと変わらない
というサビの歌詞は今回の主人公、ジェームズのイメージに被りますが、実際はボーカルのロバート・スミスが、愛するメアリーと結婚する際に彼女にプレゼントしたものだそうで、ドラマ本編とは対極のシチュエーションですね。
若き頃のジェームズが赤い(シボレー?)に乗ってシェリーとのデートの前に祖母を迎えに来るシーンで流れる曲は、ファイン・ヤング・カニバルズの『She Drives Me Crazy』。こちらもイギリスのバンドですね。なんだかイカれたPVですが、曲のほうはビルボード・ホット100で1位、同ホットダンスミュージック/クラブプレイシングルチャートでも1位を獲得し、オーストラリア、オーストリア、カナダ、ニュージーランド、スペインなどでもトップを獲得しています。
続いてはクラウデッド・ハウスの『Don't Dream It's Over』。こちらはオーストラリアの ロックバンドですね。1987年4月にビルボードホット100で2位をゲットし、彼ら最大のヒット曲となりました。米国以外でもボーカルのニール・フィンの故郷ニュージーランドやカナダなどでも1位を獲得しています。僕の好きなタイプの曲ですなあ。"マジェスティックバラード"って言うんですって? 実際に歌詞を見ると、
In the paper today Tales of war and of waste
But you turn right over to the T.V. page
とか
They come, they come To build a wall between us
We know they won't win
とか、どことなく浜田省吾臭がするんだよなあ・・・個人的な見解ですが。だから好きなのかも(笑)
エンディングを飾るナンバーはドン・ヘンリーの『The End Of The Innocence』。ドン・ヘンリーとはあのイーグルスのドンでございます。『Hotel California』のメインボーカルを務めるドラマーですな。タイトルの意味は"無邪気な時代の終わり"といったところかな。これもまた、なんか難解な歌詞だなあと思って見てましたが、当時のアメリカの社会風刺的なメッセージが込められている模様。メロディ的には、このドラマのエンディング選曲って似たようなムードのを持ってきますね。
ブルース・ホーンズビーとの共作的な曲になってまして、本作を含んだ同名のアルバムは600万枚以上を売り上げ、『The End Of The Innocence』はビルボードホット100で8位を獲得。メインストリームロックトラックチャートでは4位、ホットアダルトコンテンポラリーチャートでは2位の記録を残しています。
1989年といえばアメリカはちょうど、レーガン政権からパパ・ブッシュにバトンタッチした年。
O' beautiful, for spacious skies
But now those skies are threatening
They're beating plowshares into swords
For this tired old man that we elected king
Armchair warriors often fail
という歌詞には、好調だった国内経済に陰りが見えはじめ、翌年1991年初頭から始まる湾岸戦争に向けて、世界の警察アメリカが突っ走る・・・そんな時代の空気感を感じさせるものがあります。
1989 in JAPAN(昭和64年/平成元年)
日本では昭和から平成に移り変わった年。当時は週刊情報誌の制作現場で働いていて、昭和天皇の容態が思わしくないというニュースが前年から流れていたこともあり、新年号の装丁も2パターン用意されておりました。何事もなければ金色特色の表紙だったのですが、残念ながら天皇は崩御。大慌ててで印刷直前の差し替えを手配したことを覚えています。わずか1週間の昭和64年でした。
それを考えると、今回の令和切り替えは素敵な決断だったなあと思わずにいられません。元号が変わることがここまでポジティブに迎え入れられたのは、平成天皇の御英断の賜物。
さて、そんな平成最初の日本といえば、流行語大賞に"セクシャルハラスメント""オバタリアン"といった言葉が選ばれたことから思うに、女性の社会的影響力にスポットが当たっていたようです。
リクルートやオウム真理教が世の中をざわつかせ、『川の流れのように』をリリースしたばかりの美空ひばりが逝去。
明菜ちゃんが自殺未遂をして、 TBSの『ザ・ベストテン』が11年間の歴史に幕を下ろした年でもありました。音楽がTVから消えていった時代の幕開けですね・・・。そしてフジテレビの『オレたちひょうきん族』も放送終了。そういやオフコースが解散したのもこの年。
今思えば、昭和ってほんとに人間味あふれる猥雑な時代でしたね。平成になると世間はなんかクールな感じになっちゃって、泥臭さとか下衆さとか、根性とか情熱とか、人間味を晒すことをカッコ悪いとする時代だったような気がします。
というわけで今回は人間臭さフル装備のこちらを持ってきました。長渕剛アニキの『とんぼ』をベストテンバージョンで。
いいなあ。沁みるなあ。締めは珍しい髪を下ろして、しっとりムードのリリーです。
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