タイトルを見ると、ある人はR.A.ハインラインの小説を思い起こし、ある人は攻殻機動隊のキャラクターを思い浮かべるかもしれません。んが、僕はやはり秋せつらを思うわけです(笑) ハインラインには負けますが、攻殻機動隊よりは4年以上早いかんね。
さて記念すべき第1話のレビューでございます。
🌃せつらと切っても切れぬ糸
秋せつらの記念すべき初登場シーンは、小春日和の陽射しの下で少女とあやとりという長閑なシチュエーション。けれど、そのあやとりに使っている糸は不可視のチタン合金製の"妖糸"。菊池先生が好きそうな詩情溢れるアプローチです。鋼を容易く切り裂くことも、少女の柔らかな指に傷ひとつ付けぬことも出来るこの"妖糸"こそ、せつらのアイデンティティ。後に似たような技を持つ敵も現れるし、後年、せつらをモチーフにしたようなキャラクターが世の中に現れたりしますが、彼とこの"妖糸"のコンビネーションの前には霞んでしまいます(まあ、もともと山田風太郎の『忍法帖シリーズ』に出てくる"風閂"が"妖糸"からインスパイアされたものですが、秋せつらというキャラとの組み合わせで唯一無二のアイコンになったかと思います)。
タイトルの"人形使い"は、彼の糸が切り裂くだけの武器ではないことを語っています。物語の中で彼は妖糸で他者を自在に操ってみせるのです。見えない糸で操られる悪者どもは、まさにマリオネット。しかも本人たちは気付かぬうちに! 恐ろしい。
🌃いざ、官能と猟奇の世界へ
記念すべきシリーズ最初のヒロインは、下劣な魔界都市の男たちの手によって、妹共々その体を"食糧"に作り変えられてしまうという過酷な運命を背負わされた真壁みほ。彼女は幽閉されていた研究所を逃げ出し、作り変えられた己の体を武器に男たちへの復讐を果たそうとします。
改めて読み直すと、この頃はエロス炸裂シーンが頻出で「こんな話が『SFアドベンチャー』に乗ったのか!」と驚きます。もしかして『S〇〇&F〇〇〇アドベンチャー』という雑誌があるのかもしれません(;'∀') 後年のシリーズにはあまりここまでのエロ描写は無いように思うし、せつら自身の設定も、全身黒づくめではなかったり、バイクを駆ったりするあたり、菊池先生の中でも様子を伺いながら書いているような気配を感じますね。ヒロインに無防備にチューされたりしますし。
この話を上梓した後に"ちょっとした"編集長とのトラブルがあって、出版社が移ったというような話を菊地先生自身がされてますが、まあ、ちょっとエロ過ぎたんじゃないでしょうか(笑)
🌃『鎌倉ものがたり』や『黄昏流星群』の魔界都市版
エロいシーンは多いとはいえ、わずか46ページの中に、魔界都市<新宿>の魅力がぎゅっと凝縮された物語になっていることは事実。おぞましく平穏とは無縁のようなこの街に、人はなぜ訪れるのか? そして命の危険と隣り合わせながら、なぜ住み続けるのか? 一人ひとり異なる答えを持った街の住人たちの"理由(わけ)"が、秋せつらという人物を通して語られていく。それが、この魔界都市ブルースというシリーズの醍醐味だと思います。故に街の住人の数だけ物語は紡がれていきます。
なんとなく西岸良平氏の『鎌倉ものがたり』のハードボイルド版だなあ、と思うこともありますし、男女の愛憎をメインテーマにしているものも多いせいか、弘兼憲史氏の『黄昏流星群』の魔界都市版みたいだな、と思う瞬間もあったりします(笑) なかなかそんなことを感じる人も少ないとは思いますが・・・(;'∀')
正直、この後、レビューをどんなふうに続けていこうか、さっぱりイメージできていませんが、それもまた、秋せつらの物語同様、形を整えていくことになりそうです。
『DESTINY 鎌倉ものがたり』 (2017年) を観ながら
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