最恐、ユジーン。

X-ファイル(S-1)Ep.03「スクィーズ<Squeeze>」

いやー、この話は何度見ても面白い! というより、何度見ても気色悪い! シーズン1の中では出色の出来ではないでしょうか。シリーズ全編を通しても記憶に残るキャラクターとして、このユジーン・ヴィクター・トゥームスは外さずにはいられません。演じるダグ・ハッチソンもこの役で、かなり注目されたようで、それほど彼の迫真のキワモノ演技が優れています(『沈黙の羊たち』のレクターの演技を参考にしたとか)。この第3話にきて、いわゆる"ミソロジー(神話)"と呼ばれる地球外生命体ネタの話以外での『X-ファイル』への期待値が俄然高まったのも頷けます。


登場シーンからヤバし。

​今回は、ユジーンが獲物を狙う登場シーンから実に衝撃的。徐々にアップになっていく、道端の排水溝の中に目てくるユジーンの顔。獲物をロックオンするときはなぜか目が金色に光るのですが、この暗闇にポッカリ浮かぶ顔というシチュエーションが、この後何度も何度も出てきます。いや、とにかくこれが気味悪い。そして、その度に流れる水流のような効果音がこれまたハマりすぎで、トラウマになりそうな秀逸さ。たぶん、この音を聞くたびに僕はユジーンを思い出すことができます(笑)


なんでもないものが怖い。

​ユジーンは遺伝子の突然変異で、体の骨格や筋肉組織を自在に変形させることが出来るという設定なので、猫もビックリなくらいあらゆる隙間から侵入できます。この年3人目の犠牲者となったジョージ・アッシャーのビルに忍び込むシーンでは、部屋の換気口のネジがクルクルと回り出す様子がクローズアップされるのですが、もう、それだけでも恐ろしい。ネジが怖いと思ったのは、生まれてこの方、この時くらいしかありません。


今週のヒマワリの種。

アカデミー時代の同僚、トム・コルトンから今回の事件への協力を依頼されたスカリーは、当初、モルダーとは別行動で捜査に協力します。なんせ、最初に事件現場にモルダーと一緒に行った時、ただでさえ彼のことを奇異の目で見ているトムに、"肝臓が大好きなレチクル星人"の話をしちゃったりするもんだから、スカリーにしてみれば「ちょっと勘弁してよ」ってなもんです。犯人は現場に戻ってくるとの自説に従い、アッシャーの勤務していたビルで張り込みしていると、非番なのに現れたモルダー。スカリーの事が気になるんでしょうね。久しぶりにヒマワリの種持ってました。「食べる?」とスカリーに言ってみたものの、捜査の邪魔をするなとケンもホロロ。


ユジーンつかまる。

​あっさりスカリーの推理通りにダクトから出てきて捕まってしまうユジーン。まあ、この時の身振りもなんだか不気味なんですよ。この後、嘘発見器にかけられたりするのですが、結局、嫌疑不十分ということでトムの上司が釈放してしまいます。このポリグラフシーンのダグ・ハッチソンもなかなか見応えがあります。1933年や1963年に起きた同様の事件もユジーンの仕業であるという自説を証明しようと、「ポハッテンミルに行ったことがある」「100年間生きている」等の質問を加えさせたモルダーですが、ユジーンはまんまとトラップを逃げ切ってしまい、逆にその質問がトムやその上司の不評を買ってしまいます。まあ、常識ではありえない質問ですわな。


このスーツはないわぁ・・・

「キミが向こうと一緒に捜査したいというのなら、どうぞ」と言ってきたモルダーに対し、「私には見届ける責任がある」とかなんとか言いながら、モルダーにつくスカリー。いい相棒を持ったねえ、モルダー坊や。それにしても、この時のパープルのスーツが、なんとも言えない下品さを漂わせているんですけども。当時はでもこういう色のスーツ流行ってたなあ。僕の会社の先輩にもいました(笑)


こんなサンタはイヤだ。

まんまと釈放されたユジーンは早速4人目をゲットするために行動開始。ターゲットの家の煙突から(よりによって。そこしかなかったのか?)侵入するシーンは、実際に曲芸師を使って撮影したらしいですが、煙突内部から撮影した指がニョニョーンと伸びていく様子や、グギバギ音を立てながら狭い穴に入っていくシーン(これは本当に曲芸師がやってのけたそうです)は、なかなかのキモ度。


オヤジ好み。

​​3人目の犠牲者・アッシャーも4人目もなかなか脂ののったオッサンでした。それ以前の犠牲者のプロフィールは定かではありませんが、このくらいのオヤジのほうが肝臓に栄養分がたくさん蓄積されているのでしょうか? いや、そうするとスカリーが狙われたのは・・・?


マイクロフィルムの時代。

​​劇中に頻繁に出てくる昔の資料のマイクロフィルム閲覧シーン。モニターに拡大投影される映像を、クルクルとレバーを回転させながらスライドさせて見る仕組みになっています。コダックが部門を立ち上げて本格的に普及しだしたのが1930年代というので、過去の遺物かと思いきや、まだまだあちこちで現役のようですね。初期の素材はビネガーシンドロームとやらで酢コンブみたいに劣化するようですが、最近はポリエステル素材になって耐久性も増したとか。


60年間、追い続けた刑事。

過去の資料をあさる過程で見つけたのは1933年のポハッテンミルの事件を担当した刑事、フランク・ブリッグスの所在。既に現役を引退して施設に入所していたフランクは、60年間追い続けたユジーンに関する資料や情報を2人に提供する。やはりモルダーの推測通り、ユジーンは60年前の事件と同一人物なのか。スカリーは代々遺伝して親から子に受け継がれているという説を唱えるも、いまひとつ信憑性に欠けることを自分でも感じている模様。


胆汁ハウス。

ブリッグスの情報を元に、ユジーンが住んでいると思しき古いビルに踏み込む2人。部屋はもぬけの空で人が住んでいる気配は無かったが、隠されていた壁の穴に入ってみると、見るだけでもエゲツなそうな物を発見。どうやら胆汁で塗り固められた紙で作られた冬眠用の繭(モルダー曰く)。胆汁ってだいたい1日に約600ml分泌されるらしいので、相当な日数かけて作ってるんでしょうな。もちろん、撮影に使用している黄色い粘液は、笛用の潤滑油らしいですが。


ユジーンの収集癖。

​​アジトにはいないと思っていたらユジーン隠れてました。天井の配管の上に。くらがりで上手にスカリーのペンダントをゲット。これをコレクションテーブルに陳列していたおかげで、スカリーはモルダーに助けられます。それにしても、モルダーでなくスカリーに狙いを定めたのはどうしてなんでしょうかね。


ついにトムに喝!

それまでに幾度となく怒りをつのらせていたトムが、ユジーンの住居の見張りに自分の部下を使われたことを知り再びスカリーに噛みつく。「そんなに出世がしたいの?!」とスカリーに言われ「ああ、そうだよ。だから邪魔するな!」と返すトム。思わずスカリー、「だったらつまづいて怪我でもすればいいのよ!」と捨てゼリフ。トムがその後、出世したのかどうか解りませんが、出世欲とは無縁のモルダーの顔を思い浮かべてしまうシーンです(笑)


狙われたスカリー。

​スカリーを尾行して、風呂場の窓の外を伸び上がるユジーンの姿からのこのシーンですが、わかっちゃいるけど、気持ち悪い。スカリーもそれが何かわかってるだけに、心臓止まる勢いの恐怖だったでしょうなあ・・・。


顔と手だけで。

そしていつの間にか床の換気口に辿り着いていたユジーンが、スカリーを不意打ち。いい顔してますよねー。本当に恐ろしい。クレイジー。この後、この穴からシュルンと飛び出てくるんですが、さすがにこのサイズから飛び出すのは無理っぽかったようで、ちょっと枠のサイズがデカくなっているような気がします(笑)


収容先でも巣づくり。

​2人によって捕獲され、施設に収容されたユジーン。さっそく、お部屋で巣づくり再開です。というか新聞紙とか誰が与えてるんでしょうか。与えちゃダメでしょう。それをぼーっと眺めているモルダーたちもどうかしてます(笑) これって、つまりはユジーンが5人目を諦めていないということなわけで・・・。


おいおい・・・(汗)

​モルダーたちが立ち会去った後、食事を差し入れる小さな開口部をじっと見つめて、ニヤリと笑みを浮かべるユジーン。もうこうのシーンだけで鳥肌ものですよ。あの穴から出れるのか!と。頭蓋骨ですら変形させちゃえるのか、と。ユジーンの底知れぬ能力をうかがわせるこのエンディング。素晴らしい。

なんにせよ、この物語はシーズン1の後半に続編が用意されているのですが、2本セットで非常に高い評価を受けています。実はこの回を監督したハリー・ロングストリートという人は、杜撰な撮影でスタッフからも俳優からも酷評されていまして、それなのにこんなに印象的な作品に仕上がったのは、もうひとえに監督以外のスタッフと俳優のこだわりの賜物。ダグ・ハッチソンはこの役を大層気に入っていた模様で、後に前日譚として『Dark He Was and Golden-Eyed』の脚本を自ら執筆して、クリス・カーターに送ったほど(それは契約の関係上、クリスが見ることは無かったようですが)。ダグはその後『CSIシリーズ』などのドラマや『グリーンマイル』『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』『コン・エアー』などのメジャー映画にも出演しています。


今週の気になるキャスト。

この回はもうダグ・ハッチソンに目を奪われっぱなしで、他のキャストがすっかりかすんでしまっているのですがあえて選ぶとすれば、出世欲の塊と化した、スカリーの同僚、トム役のドナル・ローグになるでしょうか。あまりぱっとしない感じでしたが、ここにきて、大好きなドラマ『メンタリスト』の製作者、ブルーノ・ヘラーが現在手掛けている最新ドラマ『GOTHAM』に、主人公のジェームズ・ゴードン刑事の相棒役として出演中なんですね。下の写真がそうですが、いい感じの老けっぷり! まだ『GOTHAM』見てませんが、知人からの評価もそこそこ高いので見ないといけないなと。

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